風邪でGPを受診した時によく聞かれるオーストラリアの医療についての疑問

ニュースレター2011年9月号から抜粋

日本語医療センター代表 千綿真美 著

ウイルス感染(Viral infection)ですね、パナドールを服用して、水分をよく取って、ゆっくり過ごすように。風邪症状でドクターの診察を受けて、たいていの人がこのように言われているかと思います。日本だったら、抗生物質に鎮痛解熱剤、痰がらみや咳を抑える薬からうがい薬に胃薬まで処方してもらえるし、症状がひどければ外来ですぐに点滴まで受けられるのに・・・・とぼやく声がよく聞かれます。

 パナドール

panadol-tablets_4d71b03caf7ce

Panadol (Paracetamol) は別名アセトアミノフェン(Acetaminophen)で鎮痛解熱剤です。アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬と異なり、胃に優しく、ほぼ副作用も依存性もないという点から、オーストラリアでは乳児から大人まで幅広く使われています。

風邪はそもそもウイルス感染によるものであって、このウイルスに対して抗生物質は効きません。ウイルスは身体の免疫が働き、何もしなくても数日経てば排出され回復しますから、その間不快な症状を抑えるためにパナドールなどを服用しておけばよいという見解です。抗生物質が必要となるのは、ウイルス感染に続き引き起こされた肺炎や気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎、扁桃腺炎などの細菌感染です。日本ではこの細菌の 2次感染を 予防するために風邪の引き始めから抗生物質が処方される治療方針が主ですが、オーストラリアの治療方針と違うために戸惑うかと思われます。ただしこちらでも喘息を持っている方や風邪を引くたびに気管支炎や扁桃腺炎を引き起こしているという病歴がある場合はその旨を考慮して抗生物質の処方が早めにされますので、ドクターにきちんと説明しましょう。

 点滴

点滴はオーストラリアでは重症で病院に入院しない限りは簡単には行われません。口から水分を補給できる状態であれば必要ないという見解です。日本で風邪や胃腸炎で受ける点滴のほとんどは電解質とブドウ糖補給がメインです。発熱や下痢や嘔吐で身体が脱水傾向にある時は頭痛やだるさがひどくなります。よって点滴によって直接血管内に電解質やブドウ糖を即効で補うことで気分が多少良くなります。オーストラリアでは水分をよく取りなさいとアドバイスされますが、特に点滴代わりにいいものは“ Gastrolyte ”などは薬局で買える総合電解質補正製剤でこれは“飲む点滴“になりますし、 Cordialはスーパーで買える水で薄めて飲めるジュースですが、これも糖分とナトリウムが補給できます。 Gatorladeなどのスポーツ飲料もよいでしょう。

 うがい

うがいは西欧の医療文化では効果があるものだとはあまり認識されていませんのでドクターたちはうがい薬を処方しません。以前に豚インフルエンザ流行の際に受けた講義で聞きましたが、うがいが存在しない文化も世界には多くあり、よって WHO'世界保健機関(の予防マニュアルには“うがい”は載っていないそうです。ですからこちらの薬局でもうがい薬は売ってはいますが、ドクターたちはうがいするなら薄めた塩水でとアドバイスされるぐらいが多いかと思われます。

 胃薬

日本にはオーストラリアには存在しない、ドクターたちにも何の成分かもわからないたくさんの種類の胃薬が存在し、抗生物質などを処方された時には必ず一緒に処方されています。これもまたたいていはあらかじめ薬によって胃の調子が悪くなるのを抑えるための予防的な目的です。オーストラリアでは胃薬の種類はそれほど多くはなく、明らかな胃炎や胃潰瘍などに対しての治療としてのみの処方となります。

異国に来て今までと違う医療方針に戸惑うことは多いかと思いますが、診察を受ける時には疑問があればドクターにきちんと聞いて納得し、希望があれば伝えるようにすることが大切です。

 

 

ブックマーク パーマリンク.

コメントは受け付けていません。