ニュースレター2011年12月号
虹の会DV研究会 著
2010年12月末に4歳と10ヶ月の二児の日本人母親の方が別居中の夫に口論の末、暴力を振られ、殺害され放置された残忍な事件が報道されましたが、記憶に残っている方もいらっしゃると思います。彼女は長い間、お酒を飲むと暴力を振るう夫との毎日の生活に恐怖でおびえながら暮らし、警察を呼んだこともあったとか。その後、施設に入居したり、家に戻ったりを繰り返したようですが、残念な事にこんな悲惨な事件になってしまいました。
このような事件が二度と起こらないように、被害者の方の死を無駄にしない為にも、私達はDV に関してもっと知るべきことがたくさんあるのではないかと数人が集まり、勉強会を始めました。
DVとは
DVとはまず、DVの定義を調べてみると、結婚や同棲・恋人の相手から受ける身体への暴力のみならず、下記の4項目があります。重要な点は、普通の(夫婦)喧嘩とは異なり被害者が少しでも怖いと思う事です。
1. 個人の人格を認めず所有物のように扱う (Possessivenes)
- パートナーがどこで何をしているか、誰と一緒か常にチェックする
- パートナーがどこで誰に会うか、行動の制限をする
- お金を一切渡さない又は金銭的にコントロールする
2. 嫉妬 (Jealousy)
- 理由もなくパートナーが忠実でなく浮気をしているととがめる
- 暴力的で不快な態度を示し、家族や友達から切り離す
3. けなす( Put down)
- パートナーを公衆の面前や家庭内で知性やルックス、能力などを屈辱的に攻撃する
- 常に他者とパートナーを否定的に比べる
- パートナーとの関係の中ですべての問題はパートナーに責任があると非難する
4. 脅威と脅し(Menace & Threats)
- 怒鳴る、不機嫌に黙りこくる、故意にパートナーの大事にしている物を壊す
- パートナーやその家族、友達やペットなどに暴力を振るう
- 性的強要・暴行をする
対処方法
最も大切なことは被害を受けているあなたと子供の安全性のことです。安全な住居を得ること、危機からの解決法、子供のこと、金銭的な問題など、 “Safety Plan”について誰かに相談するべきです。具体的な対策は以下の通りです。
1.何が起こったかを日記に細かく記しておく。言語暴力は特に証拠 になり難いので、実際にどういう事を言われたかを記載して下さい。特に“浮気したら殺してやる”とか“子供に二度と会わせないぞ”などの脅迫。これはその時どうしたらいいか迷った時でも、後から自分の身を守るためにパートナーを訴えようと思った時などに役に立ちます。後記で説明するVROを取得する時や警察に訴える時など。
2.怪我をさせられた場合、直ちに医療機関に助けを求め、医師に何が起こったかを説明し、診断書を書いて貰い、オリジナル+コピー(信頼出来る人へ預ける)を保管する。
3.怪我の具合や、所有物損傷などの証拠となるものを写真(携帯のカメラもOK。でもくれぐれもパートナーから見つからないように)に撮り、コピーを信頼できる人へ預ける。
4.もし、 SMSや留守電などで脅迫されたら、メッセージを保管しておく。
5.前もって信頼できる人にお金やパスポートなどの重要な書類のコピーや予備の鍵な必要と思われる物を預けておく。
6.事前に個別の銀行口座を作っておく。
7.身に危険を感じ、家に留まっていることが安全ではない時は、直ちに信頼のおける親戚、或いは友達に助けを求めるか、専門機関に連絡をし、シェルターを紹介してもらいましょう。
8.緊急に家を出る場合、パスポート、運転免許、子供の出生証明、結婚証明書、銀行口座の明細、クレジットカード、医薬品、法的に必要な書類(certified copyをJustice of the Peaceを介して作っておく事をお勧めします)衣類やその他必要な物すべて、前もってリストにしておき、持ち出すようにするようにしましょう。一度家を出ると、簡単には所有物も取りに行けない状態になるからです。
9. しかしやむを得ず取りに行く場合は、警察に ‘Police Stand by’(エスコート)を電話で予約してより安全な行動をとりましょう。数回電話しないと来てくれない場合が多いですが気長に電話してください。この場合最高でも 30分くらいなので家具などの運送時などは難しいかと思います。
10. 自分や子供の身の安全を守るために Legal Aidや警察などの機関を通して加害者の相手に Violence Restraining Order(VRO:暴力行為拘束勧告令または接近禁止令)を出してもらうことになることもあるでしょう。これは裁判所から出された法令で、加害者があなたに接近や連絡をしないようにさせ、あなたへの暴力や罵倒などの脅かしから守ってくれるものです。その他に子供の親権のこと、あなたのビザに関してのこと、離婚についてなど法律的にいろいろな問題があると思います。必ず Legal Aidのような機関から専門のアドバイスを受けられたら良いでしょう。
オーストラリアではDVを子供の前でやる事自体が犯罪になります。 Department for Child Protectionに相談するのも良いでしょう。たとえ母親のみが被害者でも子供を守る義務があります。子供の立場になって勇気をもって行動に移してください。
パースには20箇所以上のシェルターがありますが大体どこも Non profit organisationが経営しているので料金がかかります。一泊$ 20くらいでしょう。CentrelinkからRent assistanceというのがおり、シェルターのスタッフが手続きの手伝いをしてくれると思います。それ以外にもDVの教育、VROやPolice Stand byの手配、アパート探しの手伝いなどしてくれます。ただ利用者が多いのですぐに入れない場合も多いみたいです。手順としてはまず最初に本当のDVかどうか調べるためスタッフが “Phone assessment”をします。この時決め手になるのが最後にDVにあったのはいつかという事とどういうDVをされたか、そして子供の年齢などを聞かれますが場合によっては空きがあっても入れない時もあります。また予約制ではないので毎日電話することになります。入ってからは友達なども尋ねていけないようです(外では会える)。
問い合わせ先
1.Legal Aid Domestic Violence Legal Unit (8:30am-4:30pm) 9261 6254
法律的な相談。主にVROや親権の相談。所得がない人(専業主婦など)には無料で弁護士/カウンセリング をつけてくれる。通訳サービスあり。
父親がOZの場合自分に子供の全親権がない場合(Full Custody)許可なしで子供を日本に連れて帰るのは違法になるようなのでこのような状況のときは相談してください。
2.Family Violence Service 9425 2455(パースの Central Courts内)
他の地域の Magistrate Court内にもある。法廷でVROをとる時、書類作成の手伝いをしてくれる。 Safety Planもたててくれ、シェルターの紹介もしてくれる。午前10時までには行きましょう。通訳の予約可。また Duty Lawyerもいるので一人で法廷に立ちたくない人はぜひ相談してください。【無料】
http://www.victimsofcrime.wa.gov.au/F/family_violence_service.aspx?uid=4170-2512-7364 -4335を参照してください。
3.Multicultural Women’s Advocacy Service(Perth, Gosnells, Mirrabooka, Fremantle and Rockingham《9:00am-4:30pm》)9328 1200 or 9227 8122
シェルター、住居、カウンセリングなど