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老後をどこで誰と暮らすか
中原武志
2001年12月
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99年、東京で開催された海外日系人大会に出席したおりに、別の会合が外務省会議室で開かれ、私にも参加の要請がありました。その会議が終って退席しようとしていた時に、時の領事移住部部長から「豪州で日本人を対象にした老人ホーム及び病院を作る場合の障害などについて調べて欲しい」という要請を受けました。
以前から日本人の間で「日本人だけの老人ホームがあれば」という話をあちこちで耳にしたことがありましたので、この要請を受けた機会に調べました。
結論から申し上げますと、豪州は広く、豪州のどこに設置するかによって条件は異なりますし、日本人だけの施設を作ることは実質上出来ないことが分かったのです。
調べる過程で浮かび上がってきたのは、西豪州厚生省の担当者の意見でした。豪州に数多く存在するリタイアメント・ビレッジを利用すると言う方法です。豪州の都市には、各サバーブ毎にあるかと思われるほど多くのリタイアメント・ビレッジが存在します。
オーストラリア人は同じ家に何十年と住む人は少なくどんどん転居していきますが、特に子供たちが独立した後は、より小さな家に移ることが多いようです。老齢期を迎えますとそれまで住んでいた家を売り払いリタイアメント・ビレッジで暮す人も多く、そのためリタイアメント・ビレッジ建設が増えているように思います。
大きな庭の管理、プールの管理などから逃れられるだけでなく、ビレッジで新たな友人を作ることも出来ますし、家を売った差額のお金を生活費に当てることができるという面ももっています。日本では考えられないような素晴らしいシステムだと思います。
リタイアメント・ビレッジは西豪州だけでも200箇所以上あり、そのすべてを調べることはできませんが、今回その内の3箇所を推薦していただき見学会を催しました。参加者は8名でした。以下は見学会で見たこと、感じたことと、参考までに豪州最大のリタイアメントビレッジについても書いてみました。
「ST, CETRO IVES」の様子はここから Tighe ST, JOLIMONT
「OCEAN GARDENS」の様子はここから 60 Kelinda DR, City Beach
「CAMBRAI VILLAGE」の様子はここから 50 Heater AV, MERRIWA
「EARLE HAVEN RETEIREMENT RESORT」の様子はここから 豪州最大のリタイアメント・ビレッジ
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(注意点)
リタイアメント・ビレッジはRetirement Village Act 1999(リタイアメント・ビレッジ法 1999年制定)により定められた施設で、一般にはSelf Care Units とServiced Apartmentsが含まれます。 施設は、多くの場合私企業によって運営され、サービスの内容や入居費用、経費は運営者と入居者の契約によって行われ、法の規制はありません。 従って、入居前に専門家に相談をして、契約書を良く調べて十分納得の上で契約を結ぶことが大事です。
リタイアメント・ビレッジの場合は、ほとんどが終身リースの形をとっています。リースは住宅だけでなく共同部分の利用権と基本的なサービスが含まれていると考えてよいかと思います。
施設によって、理容室、美容室、売店などもありますし、部屋にはシャワーだけの場合とバスタブが備わっているものもあります。実際に入居する際には自分の目で確かめて納得してから契約することをお勧めします。ほとんどのリタイアメント・ビレッジは私企業の施設ですから、永住ビザでなくても入居できます。
終身リース及び期限付きリースの場合も、途中で出る場合は自由にリース権を売り買いできません。施設に申し出て決められた不動産業者により売り出され、そのときの市場価格で取引が行われます。それぞれ施設ごとに取り決めがありますので確認してください。
値上がりがあり、キャピタルゲインが発生した場合は、その25%前後~45%程度を施設側が受け取るような決まりがあります。施設ごとの確認が大切です。なお、管理費は共同部分の管理なども含まれていますが、個人で使用する電気、水道、電話などは含まれておりません。